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zoom RSS ユメ十夜(ちょっとだけネタバレ)

<<   作成日時 : 2007/03/04 21:29   >>

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夏目漱石の作中でも抜群の意味不明っぷりを誇る『夢十夜』をオムニバス形式で映画にした『ユメ十夜』。
一部ではシルバー仮面と並ぶ実相寺監督の遺作としても知られる映画ですが、近場で上映してるということで、折角だからと見てきました。

十人の監督がそれぞれ一夜ずつ担当しているのですが、それぞれに個性的……と言えば聞こえはいいですが見事なまでに纏まりがなく、『全体としての感想』などという洒落たモノはとてもとても出てきません。
それはそれでオムニバスっぽくて面白いですけど。
強いて共通点を挙げれば、やはり『夢』ということを意識しているのか、どれも不条理感を出そうとしている風ではありました。
とは言え、映像で不安定さを演出している方から、話運びの脈絡を断ってみせる方まで、手法はやっぱり様々です。

……で、以下、少しばかりネタバレ込みな各話の感想です。



・第一夜
 トップバッターは実相寺監督。
 やはりこの方、光や陰影の使い方がとんでもなく上手いです。ホラーじみたところなど無い癖に、見ていると何やら落ち着かない気分にさせられますし。
 話は概ね原作そのままですが、女が『死にます』と言い出すまでの挿話が加えられ、更にオチが少し捻られています。
 原作は、女を埋めた場所から生えてきた花が契機で百年経ったと悟りますが、映画では、女の周りに家財を積み上げて墓の代わり(?)とし、その上に置いた金魚鉢を見て百年を悟ります。
 意味が変わっていると見るか、映画としての演出が加わっただけと見るかは人それぞれでしょうが、個人的には『漱石が原作を書いてから百年経っている』意識が監督にあったのかしらん、などと。

・第二夜
 続く市川昆監督は、こちらも原作そのままに、少しオチを加えた形。
 台詞は一切声に出さず、音も極力絶つという面白い演出をされています。画面もモノクロなので、十夜の中でも一番見た目が『夢』らしいかと。
 原作は時計が二つ目を打ったところで終わりますが、映画はその後もう一度坊主との問答が入り、大きく違った後味になっています。
 ほんの一言なのですが、それでがらっと変わってしまうのですから面白いものだなぁ、と。

・第三夜
 原作中随一のホラー風味な第三夜には、ホラー監督の清水崇。
 漱石自身の実生活(第一子を流産で亡くしているとか……)を話に絡めることで話を膨らませ、また気味悪さも微妙に増しています。
 難を言えば、漱石自身の話を絡ませたことで『何だか分からない気持ち悪い夢』が『理由のある悪夢』に変わってしまった点がちょいと残念ですが。
 フロイト先生は大喜びしそうです。

・第四夜
 前三夜に比べ、原作との乖離っぷりが激しい一夜です。
 原作では主人公も子どもと一緒に蛇爺さんについていきますが、映画の主人公はむしろ、『蛇爺さんについていく子ども』についていきます。
 そしてその子どもが、実は……というオチなのですが、正直、ちょいとありきたりではないかと。
 原作の奇妙な寂寥感が、昼ドラめいた悲劇に摩り替えられたかのようで、別の意味で寂しくなってしまいましたり。

・第五夜
 こちらもステキなまでに話が変わった第五夜です。
 『女が馬で駆ける』『夜が明けて鶏が鳴くまで』という点だけ借りて、それ以外は完全に作り直したと言ってもよいかと。
 これ単体でなら不条理短編映画としてそれなりなのでしょうが、妙にテーマじみたものを込めている点が個人的には辛いです。
 夢十夜は得体が知れないから面白いのであって、はっきりした主題を持った時点で別物だと思うのですが……

・第六夜
 松尾スズキは馬鹿だと思います。(褒め言葉)
 運慶が発狂したラッパーみたいな服装だったり、仁王を彫ると言いつつ踊り狂っていたり、登場人物が2ちゃんねる用語で話したり……と好き放題やっているのですが、その癖大筋は原作通りなのですからスゴいと言うか何と言いますか。
 これまたオチ(明治の木には仁王は埋まっていない、の下り)は微妙に変えているのですが、この改変は面白いと思えました。

・第七夜
 何故かSFアニメになった第七夜。
 最初は違和感を感じますが、第六夜と同じく、見た目が違うだけで基本路線は原作そのままだったりします。
 こちらで原作と変わっている点としては、主人公が『行き先の分からない船』ではなく『船に自分の居場所がないこと』に悩んでいること、オチがやけに前向きになっていることでしょうか。
 そのせいで、原作の諦観と後悔は微塵もなくなり、前向きな青春ストーリーっぽくなってたりします。
 ……いえ、個人的にこういう話は苦手なのですが。
 映像がいいだけに、話が好みから外れたことが残念でしたり。

・第八夜
 徹頭徹尾意味不明な第八夜。
 原作からして意味も脈絡も不明ですが、映画も負けず劣らず何が何なのか分かりません。
 もはや原作と似てるのか似てないのかすら判断できない有様です。
 意味不明な話が好きかどうかで、この夜の評価は二分されるのではないかと。私は割と好きですが。

・第九夜
 こちらは打って変わって原作に忠実に、そこにミステリ要素を追加した映画です。
 映像は原作の雰囲気をよく出していますし、ミステリ部分を除けば余計な追加もそうありません。第一,二夜に並ぶ『原作通り』の作品かと。
 あとはミステリ風味を受け容れられるかどうかですが、これも原作の雰囲気の延長といった感がありますので、拒絶する方は少ないのでは。

・第十夜
 脚色:漫☆画太郎。その一言で全てをお察しください。
 大筋は意外に原作準拠ですが、グロを始めとするB級趣味が全開なせいで、とてもそうは見えません。
 あと、これも妙にテーマっぽいものが匂ったりもするのですが、監督が山口雄大だけに素直にテーマと受け取れないのが微妙なところです。いや、その『テーマっぽいもの』まで含めてネタかもしれませんし。
 話どうこうではなく、B級好きかどうかで評価できてしまいそうです。


個人的な好き嫌いでは、一・二・三・六・九が好き、八が何とも言えず、四・五・七・十はもう一頑張り……といったところでしょうか。
あと、一本くらいは不条理でない作品があっても面白かったかもしれません。
いえ、夢らしさを演出するには当然の手法だと思いますが、さすがに十本続くと少し胃もたれが。

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